海の星座

光を射す言葉を。

目の前の背中を追うこと -16/8/17 CONNECT YEAR 2016 大阪編-

「 CONNECT YEAR 2016 大阪編 〜優しく先輩に踏まれたい〜」

そう銘打たれた3マンのイベントが大阪・福島のJR高架下のライヴハウス、LIVE SQUARE 2nd LINEで幕を開けた。

今夜のホストは京都出身のバンド、LOCAL CONNECT。その名に、その編成になってから1年が過ぎた、その記念イベントなのだという。前身バンドも2度ほど見たことがあったが、休止期間を経て再出発してからというもの、彼らの進化には目を見張るものがある。アニメ「俺物語‼︎」の主題歌を務めたことも記憶に新しい。そんな彼らが今回の自主企画に呼んだ「先輩」が、大阪のユビキタスに、東京のLarge House Satisfactionである。とてもじゃないが「優しく」踏んでくれそうにはない。

 

開場後すぐにOAとしてLOCAL CONNECTからISATO、Daiki、Natsukiが登場する。アコースティックでの演奏ということらしい。NICO Touches the Wallsの「夏の大三角形」に椎名林檎の「ギブス」という正反対に位置するような2曲をチョイス。ISATOとDaikiの見事なハーモニーが小さな箱の中に満ちる。オープニングアクトとするには些か勿体無いような、贅沢な時間となった。

 

18時半、SEが流れ出し、トップバッターのユビキタスがステージに現れる。ステージ中央で拳を合わせ、それまでの和やかな雰囲気が一瞬にして、ピリリと緊張したものに変わる。1曲目はヤスキのアカペラで始まる「空の距離、消えた声」。この幕開けはこの1年で定着したが、毎度心を震わされる。回数を重ねるごとに、振り絞るような彼の歌はその力を強めていく。ちらと聴いただけでも、ぐっと引き込むような魅力を放つようになった。この日のセットリストには2曲、新曲が組み込まれていた。「サカナ」、「チャンネル」と題されたそれぞれは見事に彼ららしさを持ちながら、新境地に手をかけようかというところにある。「サカナ」のエッジの効いた印象的なギターリフが全体から一つ前に出て聞こえるのは、彼らの代表曲「パラレルワード」に見られるそれと重なり、これぞユビキタス!と思わせるが、そこに乗る歌詞はこれまでにはなかったラップ調である。ライヴでは定番の人気曲「ワンダーランド」や昨年のシングル「透明人間」、アルバムリード曲「ヒーローのつくり方」も合わせて演奏し、ユビキタスのこれまでのダイジェストとも呼べるようなセットリストを用意することで、現時点での彼らのいる場所を提示して見せたと言えるだろう。とはいえ、新曲がさらに飛躍していることからも明らかなように、彼らもまたとどまることを知らない。LOCAL CONNECTには『先輩』として呼ばれた今回であったが、実際彼らは先輩として余裕を見せるのではなく、俺らはこれで戦うから、と改めて言い放ったようなステージだった。

 

続いてLarge House Satisfaction。ユビキタスやLOCAL CONNECTとは明らかに毛色の違うバンドだ。音も言葉もアグレッシヴな彼らに、この場の空気はどう変わるのか、見当もつかなかったし、もちろん興味深くもあった。

「大阪!そんなもんじゃねえだろ!!」とVo.要司が吠える。まだフロアは呆気にとられている人が大多数だ。しかしそれで怯むようなバンドではない。さらに焚き付けられたように音を鳴らし、噛み付くように歌声を轟かせる。その熱に浮かされて、じわじわと延焼していくようにオーディエンスの手が挙がっていく様は実に見ものだった。彼らのライヴの恐ろしいのは、その音を耳からではなく、脳内に直接流し込まれるような感覚に陥ってしまうところだ。頭の中をその鋭く尖った音が支配し、ありとあらゆる思考が停止して、視点は3人が汗を撒き散らしながら暴れまわるステージに釘付けにされてしまう。

中盤、要司がLOCAL CONNECTに向けてゆっくりと言葉をつないだ。「大それたことは何も言えねえけど、俺に言えるのは、続けろ、ってことくらいだ。やめんな。」と。そして、続けてきたから今ここにいる、ちょっと長くやっている背中を見せてやれる、と続けた。自分たちがいつもと雰囲気の違う中で演奏するとなってもなお、その攻め続ける姿勢は変えない、決して臆することなどない彼らは、圧倒的なまでに「ロックバンド」そのものである。

 

そしてラストにはもちろん、LOCAL CONNECT。待ち望んでいたフロアもがらりと雰囲気を変え、沸き立つ歓声で彼らを出迎える。5人が所狭しと並び、ステージいっぱいから音を弾けさせると、ぐわり、と空気が揺らいだ。個性豊かな5人のメンバーがさも楽しそうに音で空気を彩っていく姿には目を奪われる。ISATOとDaikiによるツインボーカルの完全なハーモニクスがやっぱり魅力的で、その "2人" という力に一瞬ひるみさえする。暑苦しいほどの熱量でオーディエンスと対峙していく姿は、がむしゃらであり、誠実でもある。だが、反対にその熱量がギャップを生んでしまっているのも事実だ。彼らを愛してやまない人たちには間違いなく素晴らしい。彼らが気になり始めた人たちはきっと面白いはずだ。ワクワクさせられるはずだ。しかし、たとえば彼らを初めて見た人たちにはどうだろうか。彼らが間違っているとは思わない。彼らの熱っぽいステージは人を惹きつけるし、彼らの音も声も言葉も、とても素直で親しみ深い素晴らしいバンドだ。ただ、見たことのない人をも巻き込める懐の深さを、誰も置いていかない大きさをこちら側に見せつけてほしい。

ステージ終盤、彼らは11/3、10と東阪のワンマンを発表。それまでにもCONNECT YEAR 延長戦と称してツアーを回るとのことだ。3ヶ月で彼らはどれだけ力をつけるだろうか。待ち焦がれたワンマンのステージで、彼らはどんな景色を見せてくれるだろうか。

 

そういえば、Large House Satisfactionのステージで、要司は「優しく先輩に踏まれたい?なめんじゃねえよ。」と噛みついた。それに対してLOCAL CONNECTのISATOが、同じく自身のステージで「これほんまに、俺終わってから命落としかねないんで、サブタイトル変えます!『思いっきり先輩殴りたい!』です!!」と返答。やっぱり思った通り、「優しく」踏んでもらえるわけがなかったのだ。