海の星座

光を射す言葉を。

bet on them. -17/05/31 ユビキタス at サルベージ計画番外編-

約2ヶ月ぶりに、ユビキタスのライヴを見た。

この2ヶ月の間に、休養中だったDr.ヒロキが脱退、メンバーはVo./Gt.ヤスキとBa.ニケの2人となった。ヒロキの休養中からすでに仲間のバンドに助けられ、サポートドラムを入れながら進んできた彼らではあったが、5月からは、そのあくまで一時的な、という形ではなく、正規のドラマーがいないバンドとして新たなスタートを切っていたのだ。

 

用意されたセットリストは、意外にも過去の曲に絞られていた。最新作「ジレンマとカタルシス」からは1曲もなく、ここ最近はほとんど演奏していなかった「ディスコード」が入っているという、思わず意図を読み解きたくなるような、レアで懐かしい選曲だった。ニケのアグレッシヴなベースラインは深みを増し、ヤスキの歌声はまた強さと美しさを重ね、2人のユビキタスはまたその魅力に磨きがかかっていた。サポートドラマーのNATSUKIの繊細な、芯のあるドラムとも、紡ぎ合わせて織るように丁寧に音を合わせ、新しい三角形を描いていた。

それを素直に喜ぶことができる人は、まだそう多くはないだろう。ライヴを見て安心したファンがいれば、ライヴを見たからこその埋めようのない寂しさが心に引っかかるファンもいるはずで、それを咎めることは誰にも、たとえメンバーであっても、できない。ただ、フロアで感じたあの切実さから言って、今の彼らがオーディエンスに、そしてファンに、何を語り、何を見せるのかが、これまでより大きな影響力を持っているのは確かだ。そういう意味でユビキタスにとって今は、これまでになく一番不安定な時期だと言えるかもしれない。

 

彼らはこの日、新曲「美しい日々」を披露した。その曲振りにあたって、ヤスキは「ずっとヒロキがいた時の曲をやってきたけど、ちゃんと俺らが前に進んでるっていうことを見せたい、この今の3人にしか出せへん音を鳴らしたい。」と語った。誰に媚びるでもない素直な言葉は、彼の想いは、その新曲のストレートな歌詞と彼の持ち味であるクリアで貫くような歌声と合わさって、ステージから降る。優しく、愛おしげに微笑みながら歌う姿に、今この瞬間も歌っていることへの喜びを噛みしめるような、しっかりと芯のある声に、彼がこのバンドで生きていくことに覚悟を新たにしたのだと思えた。

 

ヤスキがよく言うように、辞めてしまうこと、歩みを止めることは簡単だ。それでも、吐きそうになるほどの葛藤を越えて、彼らは進み続けることを選んだ。2人でユビキタスというバンドを守る、と宣言した。そんな2人を、今はただ、信じずにはいられない。