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海の星座

光を射す言葉を。

響く音のスコール -17/04/27 ココロオークション『CCR UNPLUGGED』-

丸い椅子が3脚と、カホンが1つ。アコースティックギターが2本に、アコースティックベースが1本と、小さなキーボードが1台。マイクが4本。フロアに灯るライトに柔らかく照らされたステージは、その配置のせいか、はたまた柵がないせいか、いつもよりもやけに広い。

 

ココロオークションのアコースティックライヴツアー、『CCR UNPLUGGED』のファイナル公演が、4月27日、心斎橋Music Club JANUSで開催された。1月にリリースとなったメジャー2ndミニアルバム「CINEMA」から「スノーデイ」や「地球の歩き方」、昨年のメジャーデビュー盤である「CANVAS」から「フライサイト」、さらに過去に遡って「願い事」「群青」(共にインディーズ2ndミニアルバム「深海燈」に収録)といったバンドの新旧の名曲、日頃のバンド形式でのライヴではなかなか聴くことのできないレアな曲を、見事なアコースティックアレンジで披露した。さらにそれに留まらず、くるりLOST IN TIMEGOING UNDER GROUNDなど、彼らが好き、あるいは影響を受けたという他アーティストの楽曲をカバーしてセットリストに組み込むという、ファンにとってはまさしく垂涎の贅沢な夜となった。しかし今回は、そのセットリストやアレンジではなく、「アコースティック編成としてのココロオークション」を私なりに描き出したい。

 

大野(Ba.)はMCで「アコースティック編成は、決してバンドの片手間でやっているものではなくて、新しいバンドを1から作るような気持ちでやっています。」と語った。確かに、片手間とまでは言わないが、アコースティックに精力的に取り組んでいるバンドはわずかだと言える。それはどちらが格好いいとか、どちらが悪いとかという話ではなく、単純に実際問題として、バンド形態とアコースティック編成を両方同じ熱量で動かしていくというのは、アレンジにおいてもセッションにおいても、そのままつまりバンドを2つ同時進行させるのと同じだと言っていい。それをこうして明言できるという強さ。その自信がさりげなく、わざとらしくなく聞こえるのは、彼らの実力がそれを裏打ちしているからだろう。間に挟まれたテンメイ(Gt.)のコーナーでその一端が窺い知れた。そのコーナーというのも、テンメイ自作のご当地ソングを披露するものなのだが、その中で他のメンバーはほとんど即興で、テンメイのリクエストに合わせていく形でその曲を完成させていく。それはフロアからしてみれば、ライヴを見ているというよりはスタジオ風景を覗き見しているような感覚に近く、音が重なって1つの曲になっていく過程にはシンプルながらも思わず見入ってしまうようなひそやかさがあった。たとえそれがコミカルなジングル風のもので、そこかしこで笑いが起きていようとも。その後その4人の和気藹々とした雰囲気はそのまま、ふわりと、ライヴの本編へと流れ込んでいくのだが、弾かれ放たれる音は粒立って、ただ優しいのではなく、ただやわらかいのではなく、聴く者の心に刻み付けるような鋭さと力強さを持っていた。

バンドとして有名な彼らのライヴだという意識が働いたのだろうか、途中、その音がスコールのようだと感じた。冷たく刺すような雨ではなく、じわじわと体温を奪うような長雨ではなく、突如として激しく降り、一瞬後には何事もなかったかのようにからりと晴れるスコール。緩やかに流れる時間の中で、熱を込めて演奏されるその粒のはっきりとした音は、窓を叩き傘を打つあの激しい音によく似ていた。アコースティックと聞けば、ゆったりとテンポもスローダウンするようなイメージが未だにあるものだが、必ずしもそうではない。ギターの音ひとつとっても、繊細に爪弾かれるやわらかな音から、ジャカジャカと荒々しく掻き鳴らされる衝動的な音もあり、その幅はともすればエレキギターのそれよりも広く豊かにさえ聞こえる。軽やかそうなカホンの音色さえ、叩き方ひとつで鋭さを備え、丸みのあるアコースティックベースの音色も、時にエッジの効いた音を響かせる。そんなスコールの中で粟子(Vo./Gt)のここにいるよ、とそばで語りかけるような優しさと親しみ、聞いてよと訴えかけるような熱情を背中合わせに置いた唯一無二の声が存在感を示す。しかし、アコースティックだからと言って弱くなる楽器隊ではない。声が一人歩きするのでもない。その場しのぎでなく、その正確なバランスの良さに、アコースティックバンドとしてのココロオークションが抱く覚悟と想いを感じる。確かな形のある、言い切れるものではまだないとしても。

 

アンコール最後の曲「星座線」。次第に強さを増す雨のように音が溢れる。その日の全てを出し切らんばかりに音が、声が、重ねられていく。ぐっ、と高まりを見せた後、雨が緩やかに引くようにアウトロへと収束する。余韻を残しながら音が止み、降り注いでいた音が嘘だったかのように、夢だったかのように、周囲にざわめきが戻る。そうちょうど、スコールが上がった後の町のごとく。

熱に浮かされたような、夢を見ていたかのような、このアコースティックの感覚……と記憶をさかのぼりながら、はたと立ち止まる。Billboard Liveのあの空気だ。アコースティック・ココロオークションはいずれそこまで行けるのではないだろうか。もっとみんなといろんな景色が見たいのだ、という大野のその言葉通りに日々を重ねていけば、その先に。