海の星座

光を射す言葉を。

四重の共鳴 -16/11/25 ユビキタス LIVE TOUR 2016『カルテット』@京都MUSE-

昨夜の京都MUSEはさながら感情の坩堝と言ったところだったか。ユビキタスは毎ツアー、毎会場、実に面白い取り合わせでブッキングをする。仲の良いバンド同士なのは言うまでもないが、そのジャンルは多岐にわたり、彼らの交流の広さを思い知ることとなる。昨夜の共演はLOCAL CONNECT、ウルトラタワー、Brand New Vibeの3組。それぞれがホストのユビキタスを食ってしまうような熱量のライヴを見せてくれた。

 

トップバッターは地元・京都のLOCAL CONNECT。前回彼らのライヴを観たのは8月のことだった。その時、どことなく空回りな雰囲気を感じたのだが、今回は見事にそのイメージを払拭し、オーディエンスを丸ごと巻き込んでいた。ISATOの芯の強い、圧倒的な声量と歌唱力、Daikiのクリアで抜けるような歌声という、一見相反するかにも思えるツインボーカルの彼らのコーラスワークは、これまでもオーディエンスを魅了してきた。しかし、この夏から秋にかけて行われたCONNECT YEARと題されたツアー、そして先日終了した東阪でのワンマンライヴを経て、さらにその結びつきを強固なものとし、聴く者の心に直に響かせるような力を放っていた。その声をまーきー、しゅうま、Natsukiの鳴らす音色が彩り、5人の音がそれぞれに色鮮やかな粒となって降った。

結成当時から大事に奏でつづけている「コスモループ」がステージから溢れ出す。今年の春のアルバム「7RAILS」に収録の楽曲からも分かる通り、彼らは今その表現の幅を、創り出す音楽の幅を広げる途上にある。しかし彼らの芯にあるものは変わらない。《生きていたいと願うことが/温もり宿す灯火に/かけがえないその1秒を/誰かのため 自分のため/ありのままで生きていよう》そう歌うISATOの表情は柔らかい。着実に人気バンドへの道を猛進しながらも、背伸びも飾りもしない5人の姿に、すっと胸が軽くなる。大丈夫だ、間違ってないんだと思わせてくれるステージだった。

 

十分にあたためられたフロアを前に、ステージに登場したのは滋賀のウルトラタワー。爽やかなギターロックに、Vo./Gt. 大濱のハスキーボイスが重なる。口数は多くはないが、素朴な印象を受けるバンドだった。今を生きる若者ならではの焦燥感や夢が歌われ、初めてなのに初めてでないような、そっと側に寄り添う優しさを感じた。

これまでウルトラタワーは同郷と知りながらも機会がなく見そびれていた。昨夜のライヴはそんな自分の行動力のなさを後悔するほどに格好よかった。竹内の音の粒のはっきりとしたドラミング、平柿のしっかりと地に足のついたベースライン、流麗でメロディアスな寺内のギター、そして大濱の耳に残る声と素直な唄い方。その四重奏の中に芯の強さを感じさせ、ダンサブルなロックチューンが溢れるメジャーシーンにおいて、得意とするミドルテンポやバラードの楽曲で勝負していく4人の力強さを感じさせた。

 

3番手には東京は町田からBrand New Vibe。エモポップバンドと称される6人組の姿は、音楽スタイルは、例えば、ユビキタスのそれとは大きく異なる。この日の4組の中でもかなり異色だったと言えるだろう。「見た目も音楽も、まるっきり違うけど、それでも共鳴するところがあるから呼んでくれた。何が響き合っているのか、ステージを見て、音を聞いて感じて欲しい。」VOX KEIが語りかける。イベントを組むのに、同じジャンルである必要も、ファン層が同じである必要もない。いつもの仲良しメンバーでばかりブッキングをしたところで、目新しい刺激はないだろう。Brand New Vibeが見せてくれたライヴはまさにそんなことを改めて考えさせてくれた。

6人という人数に対して小さなステージの上で、彼らはどっしりとした力強いサウンドを鳴らす。爆発するかのようにステージから音が溢れ、オーディエンスを飲み込む。KEIの吠えるような叫びと、Nobuの澄んだ歌声が重なり合って鼓膜に、心に刺さる。反発しあいそうなほどの荒々しさと繊細さが同居する不思議なバンドだ。「俺の歌詞はずかずか心に乗り込んでいくけど、ヤスキくんのはちゃんと3回ノックをして、入ってきてくれるでしょ?俺にはそれはできないから、俺が持ってないものをたくさん持ってるから、すごいなあと思うよ。」とKEIはつぶやく。そうか、共鳴って別に、同じ手段を取る必要もないんだよな、と気づく。彼らはお互いにないもの、だからこそ惹かれるものに共鳴しているのだ。

年明けに彼らはZepp DiverCityで2度目のワンマンを行うという。広いステージであればあるほど、彼らは魅力的に輝くに違いない。決してソールドアウトも無茶な話ではないだろう。

 

そしてトリはユビキタス。3バンドがそれぞれのカラーを存分に見せつけ、オーディエンスを焚きつけた後のステージで、彼らはどんな光を我々に見せるのか。

ステージに上がった瞬間から、彼らの目の色が違った。自分たちの主催でありながらもギラギラと好戦的な眼差しをして、何かに挑んでいくような姿勢だった。仲間であり、友人であり、それでいて負けたくない相手としてゲストのバンドを捉えていることの表れだったのだろう。セットリストはもちろん、「孤独な夜とシンフォニー」を中心に構成され、今まで根強く残っていた「ワンダーランド」をもそこから外していた。それは1月にリリースの新譜へ、さらにはその先の飛躍へ確実につなげるという、彼らの意思と現在地を提示しているのだと受け取れた。

昨夜のステージで言えば、さも楽しそうに表情豊かに唄い奏でるVo. ヤスキと、アグレッシブなサウンドで楽曲の持つ強さを見せつけたBa. ニケの姿が非常に対照的だった。その間でストイックかつ丁寧に鳴らすDr. ヒロキを含め、3人はそれぞれバラバラの方向を向いて好きなように鳴らしているかに見えたのだが、音の結束は強く、また彼らの表情も視線もお互いを意識し、リンクしあっていた。ライヴを重ねるごとに、彼ら自身も、その音も表情豊かになり、力強いものとなっていく。それは互いへの信頼感と、鳴らすものへの自信が確かなものへと変わっていることを示しているのではないだろうか。

最後は次の新譜に収録の「カタルシス」を届けた。先日リリースのミニアルバムのものとは、また趣向の違うメロディーとサウンドで構成され、自分と向き合い尽くした結果のまさに【カタルシス】が見られる言葉が並んでいた。まだまだ彼らは開花する。それを確信できる夜だった。

 

共鳴とは、決して同じ方向を見るということではない。同じ考え方をするということですらないだろう。何かいいなと思うこと、どれだけその部分以外が違っていようとも、何かが心に留まるということを言うのだ。

昨夜の4バンドは、確かに共鳴していた。自身にあるもの、もしくはないもの、ほしいもの、考えたこともなかったもの……いろいろあるだろうが、彼らは音楽という同じツールを手にして、お互いの心を惹きつけあっている。そんな姿を目にしたオーディエンスはきっと幸せだ。そして彼らだけでなく、あの場にいたすべての人が、何かしらで共鳴したはずだ。