海の星座

光を射す言葉を。

高く飛び上がった君の目には何が見える? -16/8/28 RUSH BALL 2016: BURNOUT SYNDROMES-

夏の日差しに焦がされながら、ATMCステージの前で待ち構える。

 

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自らの作品である「数學少女」をSEに入場してくるのは、地元関西出身のBURNOUT SYNDROMESだ。

文學ロックという、ある種ニッチな線をついた彼らの音楽はじわじわと人気を集め、この春とうとうメジャーデビューとなった。デビューシングルは人気アニメ「ハイキュー!!」のオープニングテーマでもあり、それまで彼らを知ることもなかった層にまで一気に広がり、爆発的にファンを増やした。

彼らが今年24歳になると聞いて、最近のバンドはだんだん若くなっていくなあと思った人は少なくないはずだ。しかし、BURNOUT SYNDROMESを若僧と侮ってはならない。彼らは今年、結成11周年を迎えるのだ。そう、結成当時彼らはわずか13歳である。結成からデビューまで11年弱。学生であったこともあるが、それを考えても近頃ではそうそうない長い下積み生活を送ってきたことになる。メンバーチェンジや活動休止もなく、彼らのペースで地道に日々と時間を重ねてきた結果、BURNOUT SYNDROMESというバンドは、ちょっとやそっとじゃ揺らぎようもない強固な3人の関係性と、色濃く塗り重ねられてきた楽曲の描く世界とでしっかりと形作られている。

 

ちょっと想像もつかないような長い道のりを3人で一歩ずつ確かめるように進んできた彼らが、ついに掴んだメジャーデビュー。そして、憧れの舞台「RUSH BALL」。彼らは夢のステージで、熱量の高い演奏を見せた。〈文學ロック〉の名をほしいままにする1曲「文學少女」では、その文学作品のタイトルや印象的な一節を混ぜた詞を、Vo.熊谷とBa.石川が掛け合いにして歌う。熊谷の独特の澄んだハスキーヴォイスと、石川の柔らかいテナーが見事にコントラストを描き、観客は一気に彼らの創り出す世界に飲み込まれていく。続く「PIANOTUNE」では明るく軽やかなサビに合わせて、会場を巻き込みながらメンバー3人も楽しそうに体を左右に揺らし、3曲目の「セツナヒコウキ」は夢と恋の狭間で揺れ、夢を選ぶ少年の静かな慟哭を、熊谷がいつにも増して力強く歌い上げた。熊谷のハスキーヴォイスは、歌謡的にしつこくなることもできれば、胸を裂くように切なく響くこともできる。こんな歌声を持つシンガーには今までほとんど出会ったことがない。彼らを唯一無二にするのが、間違いなくこの声だ。

夢のような時間は一瞬にして過ぎてゆく。数ある彼らのプレイリストの中から厳選された4曲。その最後に置かれたのは、彼らにとっての大事な1曲、「FLY HIGH!!」だった。「ハイキュー!!」に合わせたような、夢に向かう飛翔を歌ったこの曲だが、やはりそれ以上にその飛翔はBURNOUT SYNDROMESのものを示す。

−− 飛べFLY HIGH!!

汗と血と涙で光る翼が 君を何処へだって連れて行く

青い衝動と本能と 爪牙を剥き出しにして

艱難の旅路も 夢叶うまで何度だって

飛べFLY 高くFLY −−

青空に向かって声と音が重なり合って突き抜けてゆく。憧れ続けたRUSH BALLのステージの上に立つ3人が見せる笑顔は、晴れやかでありながら、まだ少しあどけなさが残る。しかしあの、満ち足りたような笑顔には何者も勝てまい。ステージを降りる最後の瞬間まで、名残惜しそうに観客に手を振り続けていた。

 

彼らは自分たちにかけられた期待を知っている。そしてまた、彼らが育て、彼らが育ったBURNOUT SYNDROMESというバンドを信じ、自らを信じ、期待をかける。前途洋々とはいかないだろう。雨に打たれることも、足が前に進まない日も、きっとあるだろう。しかし彼らが地道に積み重ねてきたものは、決して今後も彼らを裏切りはしないはずだ。長い長い助走の果てに、勢い良く踏み切った彼らは、そのこれまでの日々を翼に、上昇気流に変えて、大空に舞い上がった。

今、君の目には何が見えている?蹴った地面を眼下にし、君はどこへ向かう?

 

10月26日にリリースが決まっているシングル「ヒカリアレ」、そしてそれに続くワンマンツアーできっと彼らは、この半年に見てきたものを、あの、きらきらとした笑顔で見せてくれるのだろう。