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海の星座

光を射す言葉を。

THE ORAL CIGARETTESというカタチ

7月23日、泉大津フェニックスの大きなステージの上に彼らはいた。スタンディングスペースをぎゅうぎゅう詰めにしてもさらに足りないくらい、彼らのステージを待ち望む人が、あの日あの場所に溢れていた。

いつもの掛け声から、幕を開ける。昨年リリースのアルバム「FIXION」から「気づけよBaby」、「A-E-U-I」をドロップ、会場を焚き付けていく。さらに「カンタンナコト」でオーディエンスは爆発。今夏のアンセム「DIP-BAP」はリリース前にもかかわらずファンを休む間も無く躍らせる。Vo. 山中拓也の好きなHIP-HOPをロックチューンに落とし込んだ、これもまた新しいオーラルの一面を見せる《キラーチューン》だ。そのあと「起死回生STORY」「Mr.ファントム」、ラストに「狂乱 Hey Kids!!」と続け、オーディエンスのみならず、自分をも追い込むような強力なセットリストで30分を目一杯使い切った。メンバー4人がそれぞれに感情を爆発させ、笑顔を弾けさせながらステージ上を駆け回る姿は、彼らがそこにいる誰よりもオーラルのライヴを楽しんでいることを見せつけるかのようだった。

 

私が彼らに初めて出会ったのは、2012年のカウントダウンライヴ、Ready Set Go!だった。彼らはMASH A&Rのオーディション、MASH FIGHTの第1回優勝者として、オープニングアクトのステージを得ていたのだ。まだ入場も終わっていない、客席がざわざわとしている中で、彼らは噛みつくように演奏しきった。それから、たった3年半ほどの時間のうちに、彼らの立ち位置は大きく変わった。あの時予想し得なかったほどのスピードで、彼らは走り続けてきた。そうして、今や、あの時のギラギラとした目つきと闘志をそのままに、ひとまわりもふたまわりも、大きなバンドになった。

急速なスピードでバンドの人気に火がつき、ありとあらゆるメディアでフィーチャーされ、ライヴのチケットがうんざりするくらいに取れないところまで行くと、一定数のファンの足が遠のく。遠のくのは主にそのバンドに人気が出る前から彼らを追いかけてきたファンだ。おまけに音楽好きの中でも色々な畑から色々な人が集まってくるのだから、ライヴの時のオーディエンスの様子、フロアの雰囲気までがらりと変わっていく。それを喜ぶ人もいれば悲しむ人もいるし、それがファン同士での軋轢を生むことも珍しくない。音楽を知る媒体が増えたからこそ、リスナーの発信する方法が増えたからこそ起きていることで、今売れているバンドはそのほとんどが通ってきた道なのではないだろうか。

しかしTHE ORAL CIGARETTESはそこに当てはまらなかった。BKW(番狂わせ)を旗印に掲げ、行く先々で新しいファンを取り込み、ありとあらゆる会場でダークホースとして大番狂わせを巻き起こし、怒涛のように走り抜け、今や彼らはシーンにとって欠かせない存在になった。そしてその中で、古くからのファンにも「もう違う」「こんなバンドじゃなかった」とは言わせなかった。がっちりと心を掴んだまま、誰の心も、誰の手も離すことなくどこまでも連れて行く、そんな強さと深さを、彼らはこの月日の中で身につけていったのだろう。だからファンは離れない。あなたがたにとっての一番でありたい、と正面切って言う彼らから、離れることができない。彼ら自身の音楽と、それを信じるファンを、怯んでしまうほどの気迫を見せながら、狂ったように信じ抜く姿勢を1度目にしたら、離れられなくなる。

 

3年と言えば、バンドが有名になって、人気を博して、大きくなるには短い月日かもしれない。いや、だから一層、彼らの成し遂げたことには眼を見張るものがあり、この先のさらなる飛躍を、心から期待するのだろう。THE ORAL CIGARETTESは特異なバンドだ。バンドとして音を届けながら、その音に彼ら自身が一番救われているように見えるのだ。自身を救う言葉は、音は、知らず識らずのうちに見る者を救い、導く。彼らはきっと今までのロックバンドが見なかった景色を見るだろう。今までのロックファンが見たことのない景色を作り出すだろう。そしてそれは、そう遠くない未来の話だ。