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海の星座

光を射す言葉を。

盟友との夜に -16/5/20 アイロニカルナイト-

去る5月20日、渋谷TSUTAYA O-Crestを訪れた。九州発の4人組バンド、the irony主催のイベント「アイロニカルナイト」を見るためだった。

14回目というこの日はBOYS END SWING GIRL、ユビキタス、アンテナ、waybeeを迎えての開催。アイロニカルナイトと、waybeeのリリースツアーの合同企画であった。

 

トップバッターはBOYS END SWING GIRL。千葉県出身の4人組だ。

1音目から驚くほどクリアで綺麗なメロディー。圧倒されている間にVo.冨塚のボーイソプラノが空気を割る。この4人の晴れやかな表情と、透明感は若さゆえの単純なものか、たまたま瑞々しさを放つ4人が集まったというシンプルな奇跡か。

ロックバンドの王道をゆく姿は「普通」と表現されてきたという。しかしそんな「普通」を極められるバンドはどれだけあるだろうか。活動休止を経て、復活後最初のツアー中ということで、4人が鳴らす音は、それを4人で鳴らす意味をじっくりと噛み締めているように聞こえた。

《フォーエバーヤング/僕たちはまだ終わっちゃいないだろう/未来なんて将来なんて僕たちには意味がない》

眩しいイマを重ねる彼らの「未来」に期待が高まる。

 

続いて大阪のユビキタス

めきめきと力をつけ、伸ばして、実力も人気もじわじわと上昇中のスリーピースだ。2年前はBOYS END SWING GIRLのような、まっすぐ貫くようなバンドだったが、今やそのイメージもそのまま持ちながら、心を揺らす、人に響く深みを持つようになった。届けるだけでなく、届けて響かせる。響かせたその揺らぎを伝播させる。とても力強く、たくましいバンド。

この日はそんな彼らの様子がいまひとつだった。3ヶ月前よりも確かに進化している。Vo.ヤスキの声は強く、まっすぐによく通り、Ba.ニケの音も温かみだけでなく鋭さを備えて攻める。Dr.ヒロキの刻むリズムも、その音も、深みを増して曲に幅をもたせている。にもかかわらず、バラバラに聞こえた。3人の音が、散らばって聞こえた。彼らの三角形が作る音は、いつも結束しあってステージ全体から鳴り響いているのに、だ。

ステージに立つ彼らは楽しげだった。少し力んでしまっていただけ、もしくは筆者の勘違い、そうであってほしい。

 

3バンド目は仙台からアンテナ。どこか懐かしいサウンドとVo.渡辺の優しいハスキーボイスが心地よい。この表現だけでは彼らの音がまるでフォークやカントリーのように感じられるかもしれないが、実際は歌謡的な要素を持ったロックだ。螺旋階段のようにループするレスポールのリフ、小気味よく刻まれるハイハット、音の底で揺らめくベースライン、そしてそこに乗る、ほんのりと危うげな儚さをまとったハイトーンボイス。4人の音が絶妙にバランスよく重なり合ってステージから降る。

「アンテナのライヴは録音、写真撮影フリーにしてます!皆さんここぞとばかりに撮ってSNSにあげてくださいねー」と開口一番に渡辺が言う。残念ながら文化としてライヴ中に撮影をするのはタブーとされているのでカメラが上がる数は少なかったが、穏やかな笑顔とともにのぞかせる控えめなハングリー精神、好印象である。

 

トリ前にはこの日からリミテッドシングル "RADIO STAR" を販売開始したwaybee。

ダンスミュージックの色を感じられる、自然と体が揺れるような気持ちのいいサウンドを鳴らす。Vo. 藤村の純粋でポップな歌声はそんなサウンドと相まって、ストレートに心に刻まれていく。

ゆらりゆらり、音に踊る心に合わせて身体を揺らす。曲を知っていようが知っていまいが、バンドを知っていようがいまいが、そんなことは関係ない。音に合わせて音を楽しむという、シンプルな音楽との向き合い方を提示し、思い出させてくれるwaybeeのステージ。気づいたら顔がほころんでいた。

 

そしてアイロニカルナイトのホスト、the ironyの登場。

今日の主役は俺たちだと言わんばかりの気迫と、ステージをここまで繋いできた盟友達に対する感謝とで、Vo. アキトはギラギラと目を輝かせながら、キラキラと笑う。ライヴでは定番の曲たちを相次いで投下、フロアはこの日一番の盛り上がりを見せる。

しかし彼らが一番その世界を作り上げたのは "Hallelujah" だった。4人ともが九州出身、熊本・大分の出身も二人いる。群発地震から約1ヶ月、片時も故郷のことは忘れられなかっただろう。すぐにでも飛んで帰りたかったことだろう。そんな気持ちを、壊れてしまいそうな心を、ぽつりぽつりと言葉にし、その上で、叫ぶように歌われたこの曲は、フロアに青い炎のように静かに、熱く広がった。

6月には待望の2nd album "10億ミリのディスタンス" がリリースされる。この10億ミリ、九州から東京までの距離を表しているのだそう。彼らが少しずつ少しずつ紡いできた言葉、重ねてきた想いはじわりじわりと、しかし確実に広がっている。11月の渋谷WWWでのワンマンを発表したその瞬間、悲鳴にも似た歓声が爆発した。まだまだここから、彼らはさらに花開くだろう。

 

妙にすっきりした気持ちで渋谷の街を後にする。次はこのバンドを見に行こう、この音源を買いに行こう。たくさんの音にたゆたって満たされたそばから、ハングリーにそんなことを思ってわくわくしながら。